2017年6月25日日曜日

「而今の会」のオンライン下合せが進んでいます。

6月に入ってから、「而今の会」の「オンライン下合せ」に熱が入ってきています。

詳しくは、「而今の会ブログ」のこちらの記事を御覧ください。


【東版「笹の露」オンライン下合わせ】H29.6.12

【「笹の露」後の手事・オンライン下合せ【演奏動画付き】】H29.6.17

【「笹の露」中歌のオンライン下合せ【演奏動画付】】H29.6.24


これで、中歌から後歌まで、下合せできたことになります。
記事の順と逆になりますが、中歌から順番に動画を曲順に並べてみますので、もしよろしければご覧ください。








最初の師匠が亡くなりました。

私の恩人、尺八を始めるきっかけを作って下さった最初の師匠、都山流尺八の来田笙山師が、平成29年6月23日に亡くなりました。89歳でした。

この方が勧めて下さらなかったら、今の私はありません。この上ない感謝とともに、謹んでご冥福お祈り申し上げます。



写真は、今年4月に訪問した時の写真で、生前最後のご訪問となってしまいました。



24日(土)、お通夜に行ってまいりました。

お通夜の最後に、ご挨拶と献奏をさせていただきました。ご挨拶のために今までの人生を振り返ると、大学の部活、大学時代にお知り合いになったたくさんの方々、関西に移って修行時代に出会った方々、関西移住がきっかけで就職、結婚、妻も大学時代の学生邦楽の知り合い…と、現在の自分の立ち位置のすべての原点が、この尺八を初めて教えてくださった来田先生のおかげであるとあらためて気付き、そのようなご挨拶をさせていただきました。献奏は、来田先生に初めてお習いした古曲で、4月に最後に生前にお会いした時に先生の前で合奏練習をさせていただいた「黒髪」を演奏させていただきました。

25日(日)の葬儀では、冒頭に奥様の箏の御社中や、先生と同門の都山流師範の方々とご一緒に「六段」を、そして葬儀が終わって出棺の前に、ご挨拶と琴古流本曲「真虚霊」の献奏をさせていただきました。「真虚霊」の演奏のために席を立ち、尺八袋を紐解くとき、その紐の結び方、中継ぎの抜き差しの仕方を、初めてのお稽古の日にお習いしたことを思い出しました。23年経った今でも、この二つは来田先生に習った通りに続けています。ご挨拶では、そのことをお話しさせて頂き、まるで昨日のように思い出されること、こうして現在も続けさせて頂いている感謝の気持ちを述べさせて頂きました。「真虚霊」も、気持ちを込めて一生懸命演奏できたと思います。来田先生には安らかに旅立って頂きたいと心からお祈り申し上げると同時に、こうして若い頃から尺八に邁進するチャンスを頂いたことに深く感謝し、尺八界の活性化のために頑張って行きたいと気持ちを新たにしたところです。

2017年6月18日日曜日

「山口籟盟web尺八セミナー」の反応

「インターネット上の尺八講習会」とでもいうべき、「山口籟盟web尺八セミナー」を開講してから、2ヶ月が経ちました。

この間、「無料お試し版」の『黒髪』の閲覧回数は1200回を超え、セミナーの紹介サイトのアクセス数も増えてきました。また、「有料版」の方も8名の方に受講していただきました。「web演奏会」「ジョイントweb演奏会」が、時と場所を超えて琴古流尺八の「演奏」を聴いていただける場であり、ついにはそれがリアルな場での演奏会「而今の会」へと大きく前進してきているのと同時に、時と場を超えた「尺八講習会」の方も、少しずつですが着実に共感してくださる方に琴古流尺八の奏法や面白さをお伝えできてきているのであれば、本当にやりがいのある、ありがたいことであります。





そんな中、嬉しいメールを頂きました。
神奈川県のH様は、「定年退職後に尺八を始められた」とのことですが、たまたまYouTubeで僕の『黒髪』のwebセミナーをご覧下さり、質問のメールを下さいました。その研究熱心さに思わずうれしくなり、メールのやり取りをするなかで、「これは、きっと今の尺八に対するニーズが現れている考え方だ!ぜひブログをご覧のみなさまにもご紹介したい」と感じ、H様の許可を得て、メールの文章を転記させて頂くことにいたしました。ぜひ、ご覧いただけましたら幸いです。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜以下、メール本文(お名前はイニシャルに変えております)〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

始めまして、Hと申します。
YouTubeで黒髪を検索した時にweb尺八セミナーを知りました。
お言葉に甘えて、幾つか質問をさせて下さい。

①「打改」の説明で〇点は表拍子、ななめ点は裏拍子とありましたが、音名の右側のななめ点は表拍子ではありませんか?表と裏が入れ替わるとも言われましたが「打改」の説明が分かりませんでした。
②黒髪の演奏で譜面に記されていない奏法(メリ込やスリ上げ、装飾音・・・)が使われているように聴こえますが、決まり事のような奏法があるのですか?
③「琴古譜の音符・指使い」資料で全音をカリと書かれていますがどのような意味なのでしょうか?カリは音程を上げる事と理解しています。

定年を過ぎて始めた尺八ですが、これまで竹村皓盟さんのお稽古用CD和することは聴くこと也と譜面を購入して練習をしておりました。
CDには譜面に記されていない音があり、譜面に書かれない決まり事があるように思えます。知る手立てをご存知でしたら教えて下さい。

お忙しいところ恐縮ですが、時間の取れる時で構いません。回答が頂ければ幸いです。宜しくお願いいたします。


H様

こんにちは。
僕の動画を見てくださり、ご質問くださって、とても嬉しく思っております。

さて、ご質問の件ですが、
1、音符の右側の点は表拍、左が裏拍であると同時に、表側だけ見たときに、「大きな表と裏」があると思ってください。別な言い方をすると「右→左→右→左」と、4つ点が進む間に、強弱でいうと「強→弱→中→弱」のような感じがあります。洋楽の4拍子とちょっと似ているかもしれません。ただ、これは普段演奏するときには殆ど意識することはないですし、黒髪は全く意識しなくていい曲だと思います。黒髪で「合いの手」の前に「打ち改め」が来ているのは、おそらく「合いの手」の最初のところがになるようにしたかっただけだと思います。昔の曲なので、どうしてもところどころ数が奇数になったりして整わないのですが、黒髪はそんなに不規則な方ではないです。もっと不規則な曲では、本当に「打ち改め」をしっかり意識しないと、表と裏が入れ替わってしまって、曲がおかしくなるようなものもありますので、ちょっと備考みたいな感じで説明を入れてしまいました。「夕顔」みたいに整っている曲では、本当にキレイに「4の倍数」で旋律が区切れ、「打ち改め」が楽譜中に見当たりません。

2、楽譜に注釈のないメリやスリ上げは、琴古流の伝統的な「アタリ」「スリ」と呼ばれる技法で、楽譜や教則本には載っていません。琴古流では伝統的にこうした「装飾技法」にこだわる芸風であり、その入れ方は修行を重ねる中で会得していくものという認識が強かったようです。また、その入れ方のセンスの良さが、尺八の上手さのうちの一つと認識されてきたのではないかとも思えます。僕自身もパターン化されたマニュアルを教わったのではなく、10年間の修行の中で師匠から曲を習っていく中で、刷り込まれるようにして、また盗むようにして意識的・無意識的にできるようになっていったように思います。ただ、今回、このweb尺八セミナー」を開催するにいたり、やはりこうした技法はパターンごとに整理し、規則性を明らかにしてみたいという思いがあり、全曲セットのバージョンにつけている「特典動画」にはどういう音のパターンのときにどういうアタリやスリが入るかというルールを分析して解説しております。もしご興味がありましたら、受講をご検討くださいましたら幸いでございます。

3、現在は尺八の2大流派のうち、都山流の方が圧倒的に人口が多数ですので、都山流の「メリカリ」の定義が広く流通しているように思います。都山流では、普通の音を「全音」、琴古流でいうメリの音を「半音」、琴古流の中メリを「メリ」といいます。そして、「全音」からアゴをカッて半音上げた音を「カリ」と呼んでいます。これは、都山流が西洋音楽の影響を受けた流派なので、「全音」「半音」という音の認識になったものと思われます

しかし、琴古流では元来、都山の全音を「カリ」都山の半音を「メリ」といいます。「メリハリ」という言葉の語源が「メリカリ」だといいますが、要するにくぐもった暗い音が「メリ」明るく抜けた音が「カリ」なわけですね。尺八はもともと尺八古典本曲を吹くための楽器ですから、「メリ」と「カリ」しかないわけです(琴古流本曲に、ごくまれに「中メリ」が出てきます)。それに対して、明治以降、地歌箏曲と合奏する「外曲」が盛んになると、本曲で使っていたメリカリや指使いの種類だけでは、細かい転調や調弦替えの音が足りなかったわけです。ですから、「中メリ」とか「大カリ」というものが生まれたわけですね。この「大カリ」というのは、ロやチで使いますが、音階上ふつうの(都山の全音、琴古のカリ)ロやチから「さらに」アゴをカッて半音上げた音をムリヤリ生み出した音なんです。昔の尺八はもともと第3孔が今より上にあり、チのピッチが高かったので、本当にチを大カリすれば求める音程まで(リのメリと同じ)上がったんですね(現代管ではムリなので、「リのメリ」で代用)。ですから、チの横に「大カリ」「大カ」などと注釈が書かれていました。しかし、それが次第に省略して「カリ」「カ」だけ書かれたりしたこと、古典本曲をベースに持たない都山流が、琴古流の大カリのことを「カリ」と呼び、その言い方が広まっていったことなどから、琴古流の中でも呼び方が混在するようになってしまったようですね。僕はこういう混在をさけるために、伝統的な「大カリ」の語を使い、都山流でいうところの「全音」を「カリ」と解説しましたが、現在の琴古流でも混在が続いているのが実態といえると思います。


定年を迎えられましてから尺八を始めるに当たりまして、伝統的な技巧や音色を特徴とする琴古流と出会われ、ご熱心に研究していらっしゃるご様子に、琴古流奏者として心から喜ばしくありがたく思っております。ただ、おっしゃいますように、琴古流は近代以前に成立した古い芸系であるだけに、教授方法も演奏技法も画一的な明朗なものが存在していない面があります。ベストなのは親しく教授者のもとでお習いになることだと思いますが、竹村先生(同じ琴古流竹盟社の系統の先生ですね)のCDで研究されているようですし、動画等を探せば現在はかなりの資料がありますので、そういうものをご活用されればたくさんの発見があるように思います。しかし、もしお近くにいい先生がおられましたら、入門して基礎から正確にお習いになるのもいいと思います。どうぞ今後とも琴古流尺八を楽しまれ、充実した音楽活動をなさいますよう、心よりお祈り申し上げております。



早速の丁寧なご回答に感じ入りました。ありがとうございます。

「琴古流の装飾技法解説」は是非とも見たいと思います。

YouTubeでの「web尺八セミナー」は独習に最善な方法と思います。
これに、譜面を指しながらの唱譜映像が加われば、調子の取り方・流れがもっと掴みやすくなるので欲しいところです。

尺八は音色が好きで手にしました。ポピュラーな曲を楽しんでいますが、古典本曲・三曲に関心を持ち始めてから、流派や会派の違いによる音名や装飾技法のややっこしさに困惑しています。年も年ですので、古典本曲・三曲は幾つかの曲をそれなりに吹ければ良いと思っています。

尺八愛好者が広がって行くことを願い、更なるご活躍を期待しています。


※注:このメールを頂いた時に、同時に「web尺八セミナー」の受講を申し込んで下さいました。


こちらこそご丁寧な返信、およびweb尺八セミナーの受講をどうもありがとうございます。映像および楽譜へのリンクのURLメールは無事届きましたでしょうか。

各曲とも、「黒髪」と同じく、演奏動画と楽譜の映像を並べております。「唱譜しながら楽譜の映像」の方がいいかなと作成時にも思ったのですが、それだとどうしても1本ごとの映像が長くなってしまう(1本1時間半くらいになる)ため、演奏しながら楽譜を指し示していく方法といたしました。ご参考になれば幸いです。

セミナーの内容は、基礎的なところからかなりマニアックな難しめの内容まで、通常の尺八教室では触れないような中身も入れています。これは、教室だと「曲数を重ねながら、段階に応じて少しずつ解説をステップアップ」ができるのですが、こういうweb上のセミナーだとその映像1時間程度で、すべての要素を入れないと、その1映像きりの講習チャンスとなってしまうからです。ですので、すんなりご理解いただけるところと、1回では中々理解しにくいところがあるかもしれません。そういうところは遠慮なくご質問くださったり、何回も見ていただければと思います。繰り返し見ることができるのは「動画」の利点だと思います。


情報化社会の現代は、価値観もニーズも多種多様であり、そんな中尺八、特に古典の三曲合奏や本曲などに興味を持って下さったのは本当に嬉しいことです。「伝統芸能」ということで、これまで「入門」とか「古来の師弟関係・しきたり」とか、敷居の高さがあったのですが、僕はこうした日本の純邦楽も、アイリッシュやフォルクローレみたいに純粋に「民族音楽」として楽しめるものになってほしいと願っています。H様がおっしゃるように、「古曲のレパートリーは数曲で楽しめればいい」という需要も少なからずあるはずだと思います。そうしたニーズに、当方のwebセミナーがお答えすることができるならば、大変光栄なことです。今回のwebセミナーは、そうした視点からも、初傳の中でも特に有名な人気曲5曲をセレクトし、琴古流で最も標準的な「青譜」に準じた楽譜の奏法にしておりますので、ご期待に添えれば嬉しいです。


それから、もしよろしければ、web尺八セミナーのホームページに、「受講された方のご感想」というコーナーがあるのですが、こちらにこのメールのやり取り(黒髪のご質問とそのお答え、それから先ほど頂いたメールの受講理由等)を抜粋(注:結局、「全文」の掲載をお願いしてしまいました)して掲載させて頂けませんでしょうか。おそらく、H様と似たような思いを持っておられる方は少なくないように思います。僕は伝統的な修行期間を通して尺八奏法を学んできましたが、今日の純邦楽の人口減を見るにつけ、もう旧来の敷居の高い教授法方・演奏会の形式のみでは、邦楽界の閉塞感は打破できないと考えております。そのため、web尺八セミナーもそうですが、ネット上の演奏公開や、遠隔地同士の和楽器奏者による「オンラインの共演」などにも力を入れています。またこの夏、その「オンラインの共演」が現実の演奏会となり、長野で演奏会も行います(「而今の会」)。現在は「価値観への共感」が大切な時代であり、そのための情報発信は積極的に行っていきたいと考えております。ご本名はイニシャル等に変えてふせますし、抜粋した後の文章は一度目を通していただき、ご了承を頂いてからアップします。何とぞご検討くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

長文となりましたが、まずはこのたびはどうもありがとうございました。取り急ぎ御礼申し上げます。



web尺八セミナーの楽譜を印刷しました。
手元に六段、千鳥の曲、八千代獅子の譜面がありますが、ダウンロードした譜面は山口籟盟さんが作成されたのですね。完成度の高さに驚いています。映像はまだ見ていませんが期待が膨らんでいます。

「受講された方のご感想」に使える部分がありましたら使って下さい。応援したいです。

尺八の演奏形態には三曲合奏、独奏、尺八だけの合奏、西洋楽器との合奏等、好みや許される環境や条件で様々だと思います。にも拘わらず、これらの思いに応える教授方法の遅れが、尺八愛好者が広がらない要因としてあると思います。

邦楽や古典本曲は日頃、耳にしないので尺八に関心を持つ機会は殆どありません。歌謡曲が邦楽だと思っている人も多いと聞いていますし、尺八は「首振り3年コロ8年」息切れで目まいをしても音が出せない楽器という語り草も良く聞きます。

一方、尺八でポピュラー音楽を演奏していると、尺八の音を始めて生で聴きました。ポピュラー音楽に使えるのですね。音色が良いですね。とか、尺八に興味を持つ人もいます。尺八の音色は人の心に何かを響かせるのだと思います。楽器としてもっと手軽に楽しめる環境ができればと願っています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜以上、メール本文〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


H様、掲載のお許しをいただき、本当にありがとうございました。
きっと、これをご覧になった多くの方が共感してくださるのではないかと思います。
そうした思いに、微力ながら少しでもお応えしていくことで、尺八界の活性化に貢献していきたいと考えております。
今後とも、自分なりに価値観の提案や情報発信を積極的に継続していきたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

【山口籟盟web尺八セミナーの詳細はこちら!!】

2017年6月1日木曜日

【web演奏会】10分で琴古流本曲「巣鶴鈴慕」

32回山口籟盟web演奏会【10分で琴古流本曲(20)「巣鶴鈴慕」】
ふだんなかなか耳にする機会のない琴古流尺八本曲を
聴きやすい「10分程度」の演奏でお届けするシリーズです。

琴古流本曲表のうち20曲め、表の曲の最後を飾るのが「巣鶴鈴慕(そうかくれいぼ)」です。「琴古手帳」によれば、京都宇治吸江庵にて龍安より下総一月寺の御本則小嶋丈助(残水)が伝来し、同人から琴古が伝承したということです。かつては「鶴の巣籠(つるのすごもり)」と称したようですが、琴古の高弟・宮地一閑の一門(一閑流)において「巣鶴鈴慕」と称すようになり、のちに豊田古童が一閑・琴古両流の流れを受け継いだ関係で、それ以降の琴古流においては「巣鶴鈴慕」と呼ばれるようになったということです。

「鶴の巣籠」とは、尺八本曲、さらには胡弓の本曲としても有名な楽曲であり、地域ごとに様々な伝承が伝わっています。「焼け野の雉子(きぎす)、夜の鶴」という言葉があり、これは「野を焼かれるときに雉(きじ)の親は身の危険をかまわず子を助けようとするし、寒い夜、巣篭もっている鶴は、自分を忘れて子を暖めるためにその翼で覆うものである」つまり親の子に対する深い愛情を意味するものだそうです。「夫婦愛」を描いた「鹿の遠音」とともに、「親子の愛情」を表現したこの「鶴の巣籠(琴古流では「巣鶴鈴慕」)は、普化宗の禅味を帯びた宗教的楽曲の多い尺八古典本曲の中でもとりわけ表現的技巧に富み、名曲と称されることが多いように思います。江戸時代から「尺八の曲といえば鶴の巣籠」というイメージを持たれるほどに有名だったようで、歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」九段目で、加古川本蔵が虚無僧姿で登場して吹くことでも有名です。

琴古流の「巣鶴鈴慕」は十二段から成り、鶴の巣づくり、子育て、親子の情愛、そして子の巣立ちまでを描いています。曲調の特色としては、1・2孔を交互に開閉してトレモロのような音を出す「コロコロ」、喉仏でフラッターのように小刻みの音を立てる「玉音(たまね)」などが羽ばたきや鶴の鳴き声を表現するほか、この曲にしかない独特の指使いやアタリ、連続音の指使いなどが多数あり、36曲ある琴古流本曲の中でも特に高度な技巧を要する難曲とされています。また、この曲は琴古流尺八の人間国宝で竹盟社宗家であった故・山口五郎師の「十八番」としても有名で、昭和52年(1977)に米国無人惑星探査機「ボイジャー2号」に搭載された、いわゆる「ゴールドディスク(「地球の音」を宇宙に向けて発信した純金製のレコード)」に、「日本を代表する音」として五郎先生の演奏された「巣鶴鈴慕」が収録されています。竹盟社の琴古流尺八演奏家としても、特に「巣鶴鈴慕」は会派の誇りとする代表的楽曲であると同時に、演奏するのに大変気が張る曲でもあります。

「巣鶴鈴慕」は同一フレーズの繰り返しが多く、大体どの旋律も3回の繰り返しが譜面に指事されています。ただ、実際の演奏ではそうした繰り返しは省略することが多く、もし省略した場合でも十二段すべての旋律を演奏するとなると20分以上の時間を要します。私が師匠からお習いした際は、この「3回繰り返し」を省略し、全十二段を通す「23分バージョン」と、十二段すべてを演奏するわけではないものの、主な旋律や曲の聴きどころを中心に抜粋した「13分バージョン」の二通りをお習いしました。今回は後者の「13分バージョン」の演奏(実際の演奏にかかったのは12分と少々)をお届けいたします。難曲ゆえ、全ての旋律が完全な理想通りの仕上がりとまでは言えませんが、現段階での自分の力で演奏した「巣鶴鈴慕」ということで、お聴きいただければありがたいです。

なお、この「巣鶴鈴慕」で琴古流本曲の「表の曲」が全て終了します。20ヶ月をかけて、琴古流本曲の表の曲を全て演奏公開することができましたのも、聴いてくださる皆様のおかげと心より感謝申し上げます。

それから、この「巣鶴鈴慕」のあと、私、山口籟盟の「web演奏会」は、しばらくお休みを頂きます。「web演奏会」名義の動画が32本、「ジョイントweb演奏会」や、その他のライブなどの動画も含めると50本程度の動画を公開させて頂くことができましたが、「而今の会」の準備が本格化してきたことと、ちょっと一度「オフ」にすることで、しばらく自分の演奏と動画との関わり方を見直してみたいと考えております。これまで長らくの「動画での演奏会」のご愛顧、本当にどうもありがとうございました!!





「山口籟盟web演奏会」は、ふだんなかなか耳にする機会のない

尺八音楽を、インターネット上で公開する取り組みです。

2017年5月27日土曜日

「而今の会」メンバー3名の「素顔」記事リレー

「而今の会」ブログで、4月末~5月にかけて、メンバー3人の「素顔」にせまる記事リレーを掲載しました。

「而今の会の3人って、一体どんな人たちなんだろう
そんな風に興味を持っていただいた方には、その一端をご覧いただけるかもしれません。

どうぞ、ご覧ください。


・東啓次郎さん


・山口籟盟


・大庫こずえさん


2017年5月14日日曜日

筑前琵琶の石橋旭姫さんとの共演、再び!

筑前琵琶の石橋旭姫さんとご一緒に、JAPAN TRIODE MEETING FUKUOKAという、世界的なオーディオ・イベントにて演奏させていただきました。

大正8年の建築だというご本堂は、本当に「日本建築ならではの、和楽器本来の響きが味わえる空間」であり、素晴らしいものでした。

今回は世界でも指折りのオーディオ・マニアの方々の前での演奏ということで、照明もほぼろうそくの明かりのみで、かつての日本で純邦楽を奏でていたであろう空間を再現しての演奏でした。海外の方が非常に多かったですが、とても熱心に演奏を聴いてくださり、演奏終了後には琵琶にも尺八にも人だかりができて、熱心に質問をしたり楽器に触れてみたり、演奏の感想を熱く語ってくださったりと、心から「ここで演奏してよかったなぁ!」と思いました。

石橋さん、そして演奏機会をくださったJTM主催の皆様、本当にどうもありがとうございました。

 

2017年5月13日土曜日

【web演奏会】10分で琴古流本曲「鈴慕流」

31回山口籟盟web演奏会【10分で琴古流本曲(19)「鈴慕流」】
ふだんなかなか耳にする機会のない琴古流尺八本曲を
聴きやすい「10分程度」の演奏でお届けするシリーズです。

琴古流本曲表のうち19曲めは、「鈴慕流(れいぼながし)」です。「琴古手帳」によれば、一月寺御本則橋本半蔵(左文)より傳来した曲で、そのときに「葦草鈴慕」を懇望されたので、勇虎尊師に届けた上で交換伝授を行ったということです。

琴古流以外の古典本曲の伝承の中には「流し鈴慕」という曲名も聞きます。同一曲かどうかは詳しく分かりませんが、古来、虚無僧の托鉢行脚の際に吹き流して歩いた曲かと思われます。「鈴慕」という曲名は、普化宗においては「普化禅師の鐸(大きな『鈴』)の音を『慕』って、弟子の張伯が普化尺八の原型の竹笛を吹いて付き従った」という故事から来たものとされていますが、その語源が真実であるならば、漢文の文字列(動詞が目的語の前に来る)からして「慕(レ)鈴」となるべきはずであり、実際には「れんぼ(恋慕)」という一節切の曲にそうした伝説を結びつけた、後付けの当て字と解釈すべきものであるようです。ただ、この「鈴慕」が名前に含まれる琴古流本曲・古典本曲は実に数が多く、もともとは「虚無僧が托鉢で吹き流す曲」というニュアンスを持つタイトルだったのが、「巣鶴鈴慕(琴古流における「鶴の巣籠」の改名されたもの)」のように単に「尺八の曲」というだけの意味を持つ接尾語みたいに使われるようにもなり、これが「〇〇鈴慕」という楽曲が爆発的に増えた原因なのではないかと考えられます。「むかいぢはれんぼの和名」と記す古書もあることから、一番最初は「霧海篪=鈴慕」であったとする説も聞いたことがあり、それが事実であるとすると琴古流における古伝三曲の1曲目が「霧海篪鈴慕」というタイトルであるのは、非常に歴史的にも的を得た題名であるように思えます。また、確かにこの「鈴慕流」も「霧海篪鈴慕」と共通する旋律形(「ヒゝゝゝゝ…」の多用など)は感じられますので、元をたどると「霧海篪」と関係する楽曲なのかもしれません。現在では「古伝三曲」として重く扱われる「霧海篪」ですが、昔は本曲は「霧海篪鈴慕」「虚空」から習っていた(琴古流本曲の曲順においても、かつては最初の楽曲であった)という話も聞いたことがありますし、そうであるならば、「尺八で最初に習う曲=鈴慕」ということで、その後に習う多くの楽曲が派生形としての「〇〇鈴慕」であるというのも首肯できます。…小難しい話がいろいろと出ましたが、まあいずれにせよ「〇〇鈴慕」という楽曲が数が多く、どれも虚無僧が托鉢時に「吹き流した」という性質を受け継いだものであるということからすれば「鈴慕流」という楽曲名は、そうした「鈴慕」たちの中でも、かつての本質をより濃く残す1曲なのかもしれません。

ちなみに、web演奏会「10分で琴古流本曲」シリーズのアクセス数を見ると、「琴古流本曲の10分程度の抜粋」という同一条件ながら、やはり楽曲ごとに人気の差があるようで、ここ最近にアップした曲の中では「葦草鈴慕」はやはり「楽曲がいい」というご評価を頂いたというか、実際にアクセス数も他の曲より多めだったり、「いい演奏でした」という暖かいコメントもいつもよりも沢山頂いたように感じました。その「葦草鈴慕」を橋本半蔵に「懇望」されて初代琴古が伝授したというのも、平成の現代のネット上の演奏結果からみても「なるほど!」と思うものであると同時に、この「鈴慕流」も演奏してみると確かに独特の趣があり「いい曲だなぁ~」と感じるものであります。琴古流本曲の中でも人気曲の方であり、NHKラジオなどでも時々取り上げられています。「流す」という語感が当てはまるような「レーゝー、ツメ~レーゝー、ツメ~レー、ヘー」という旋律形があり、個人的にも大変気に入っています。この「10分で琴古流本曲」という取り組みを始めたきっかけが、「琴古流本曲の受ける不当に低い評価を少しでも改善したい」という思いがあったわけですが、まさにこの取り組みの結果、こうした傾向が浮上したということはとても嬉しいことであり、やりがいを感じた次第でありまして、いつも動画をご覧いただいているみなさまには心より感謝申し上げると同時に、今回の「鈴慕流」もぜひご視聴くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。



「山口籟盟web演奏会」は、ふだんなかなか耳にする機会のない

尺八音楽を、インターネット上で公開する取り組みです。